2017年3月7日火曜日

写真表現に関する覚書 #2 モチーフについて

SHIKIMI TAKEHANA
AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G, 絞り値F8, シャッタースピード1/4秒, ISO-100

 ぼくが撮りたいのは「秩序」なのかもしれない。街で好き勝手に行動する人々や、その頭上に輝く無数の電飾看板が、互いに個性を主張しあって、結果的に個々のメッセージ性が相殺されているような風景が好きだ。情報過多で、互いに無関心で、一見無秩序な光景が広がっている。しかし、誰もがルールとして思い浮かべているわけではないのに、何故かそこに流れている論理のようなものがある。法律のように誰もが従わなければならないルールではなく、一人ひとりが自由に行動しても、結果的に人々の行動を一致させるような力のことを、ぼくは「秩序」と呼んでいる。
 空間の秩序を形作るのは、一つは動線であり、そこに集う人々の目的意識のように感じられる。目的がある人にとって駅はただの通過点であり、定点に設置したカメラの画面から、動線に沿ってフレームアウトしていく。一方で、目的のない人はその場所にたむろしている。この、一点に留まり続ける人を排除しない空間の緩さが好きだ。

AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G, 絞り値F4.5, シャッタースピード1/10秒, ISO-100

AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G, 絞り値F11, シャッタースピード0.8秒, ISO-200

AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G, 絞り値F16, シャッタースピード0.8秒, ISO-200

 その場所をただ通過する人も、なんとなくたむろする人も、互いが互いに無関心で、無関心であるがゆえに共存している姿が愛おしい。同様に、背景の電飾看板が隣り合う看板の存在を無視し、自分勝手に存在を主張する景観にも心惹かれてしまう。一つ一つのメッセージが埋没し、画面いっぱいに埋め尽くされた色彩の「洪水」が、どこか一つの秩序を形作っているように思われてくる。こののっぺりとした平面性が愛しくてたまらない。ファインダー越しに覗き見るその光景を、ぼくは一枚の写真に収めたいのだ。

About the Author

SHIKIMI TAKEHANA / Author

竹花 樒(たけはな・しきみ)
大阪府出身。 東京大学大学院修士課程。 専攻は経済学、社会思想。 写真ブログはこちら→銀の筵 E-Mail: takehana.shikimi atmark gmail.com

0 コメント:

コメントを投稿

Powered by Blogger.